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月曜日, 7月 04, 2005

寄席

生まれて初めて寄席にも行きました。新宿末廣亭。こんなところに寄席があるなんて知りませんでした。

テレビの笑点で漫才、紙切り、曲芸、落語といろいろやってるのは見ていましたが、本当に入れ替わり立ち代り違う芸を見せてくれるんですね。落語だけじゃなくて飽きさせないように出来ている。途中入れ替えなしであれだけ楽しめて、この値段なんて本当に安いです。

それにしても噺家(はなしか)ってかっこいいですねぇ。テレビで見ているのとは違って何倍もかっこいいです。僕も含めてしゃべる事、表現する事が仕事の一部になっていますが、そういう人って多いと思います。僕はもともとしゃべるのが苦手で人前で話すどころか、知らない人と話すなんてありえない人間でした。だからなおさら憧れるんです。引き込まれていくようなしゃべり。それでいて面白い。くだらない事もちゃんとおりまぜる。粋で気取りの無いあのしゃべるが出来るようになれたら良いのになぁとおもいます。
落語というのは話の台本見たいのはあるのですけれども、その話自身がそんなにおもしろいわけではないということが冷静に振り返ると分かります。そもそも話の落ちなんていうものは笑いのポイントではないですよね。漫才が「いい加減にしなさい」で終わるようなもんです。面白いのは話し方というか語りというか「話し」という芸そのものなんです。
僕は話しベタで、ずいぶんと昔に「とくに面白い出来事が無くたってなんでも良いから面白く話しちゃえば良いんだよ」と新人の頃の大阪の同期に言われました。そいつはまじめでやさしいやつなんですが、話は面白く何時も会話の中心になっていました。
今から思えば、面白おかしく話す事、それが一番難しいんですよね。

末廣亭に行った日は特別な10日間のうちの1日でした。なんと小沢昭一が寄席に出て来たんです。あの人は演劇かラジオの人なわけで寄席に出てくる人じゃないわけです。新宿末廣亭だけではなくて寄席という世界ではこれまでにない出来事だったようです。
寄席に連れ立って行った仲間はみんな初めてで、落語のドラマで今はやっているから込んでいるんだろうと思っていたのですが、それにしてもものすごい人だったんです。その理由が小沢昭一さんが出てきて分かりました。そんな特別な日だったんです。

この人の話しはすごい。だって友達の永六輔さんがおもながだという、ただそれだけの話で、持ち時間15分ぐらいだったそうですが、ただそれだけでぐっと人を引き付けて、引き付けに引き付けて、そして爆笑です。そのあとまた引きつけての繰り返し。それが持ち時間の間ずっと続きます。
実にくだらない。見事です。こんなにくだらない話に二階席まで立ち見でいっぱいの人が全員引き付けられてしまうんだから、たいしたものです。

柳屋小三治もすごかった。最初は前の一席の小沢昭一さんの話しをずっとしているんです、今日は特別な日だから落語はしなくて、フリートークをしてくれるのかと思ってしまったぐらいです。延々と世間話をしていたらいつの間にかうまーく落語ねたにはいっていきました。
これまでの間にいろんな噺家さんが落語をやってくれていて、後になるほどうまくなっていくのが僕でも分かりました。小三治さんは本日のとりをとっているのですが、この人、声を張らないんです。わかりますか?大勢の前で話すときはどうしても声を大きく前に出して話しますよね。違うんです。小沢さんもそうでしたが、あまり大きな声で話さず、声の調子も抑えています。結果的にみんなが集中して聞いているんだと思います。これが出来るのってすごいと思います。聞こえないよって思わせないんですから。
ここぞというときに大きな声が出て、本当に小声になるときもあります。声を出す方向、言葉を投げかける人称の変化、すべてが状況に応じて変化します。これは計算されすでに完成されたものではなくて、お客さんの反応で瞬時に話を再構成して、話に変化をつけているんです。こんなこんな客観的な視点で見れてしまうのは、ある人の講演を見て本を読んでいたから気づいたことですが、本当にすごい技です。僕は客観的に見てしまおうとしている自分に気づくと、いかんいかん今この人の芸を楽しまなければもったいないと思い、観察の欲求を振り切って楽しんできました。

小三治さんが最初の雑談で言っていました。落語というのは、誰の何と言う落語を聴きに行こうっていうんじゃないと。だた単に誰を聞きに行こう言うもだと。何を話そうが関係ありません。ただお目当ての人が話すのを聞きに行きたいんだって。たしかに話のタイトルは事前にわからなくて誰が高座にあがるかだけが寄席のプログラムに出てるんですよね。

僕は見た事が無いのですが落語のドラマがはやっているそうですね。
たまにNHKできちんと落語をやっていますが、あの凄さはテレビではわかりません。
実際に見れば僕があこがれる意味がわかると思いますよ。

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