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金曜日, 5月 31, 2013

映画 エンディングノート を思い出して

今月はここに書こうと思う映画が見れていなくて月末になってしまいました。
なので、半年以上前に見た作品について書いておきます。



この「エンディングノート」は去年10月ごろ再上映で映画館で見ました。すぐに書こうと思う気になれず、ずっと気持ちの整理がつくまで待っていたのですが、結局そういう事にはならず、いまだにずっとざわざわしたままです。

内容は、定年過ぎても働いていた熱血営業マンだった主人公が会社を辞めた直後の話です。末期がんの宣告を受けたのですが、何をするにも段取りにこだわってきた性格から、自分の死の段取りをしていく、その姿を追いかけ続けた、ドキュメンタリー作品です。

この作品、映像を撮っているドキュメンタリー監督は主人公の娘であるという事もあり、非常に生々しい内容になっています。
といっても、激しいとかではなく、当事者として近い位置で表情や言葉が映像に記録されているということです。

段取りというとおり、"死ぬまでの間にやりたいことリスト"というだけではなくて、死んだときに何をするかという段取り全てをノートに書き上げて指示するということなわけです。
映画で「死ぬまでにしたい10のこと」とかよくありますが、エンディングノートという言葉の意味はそういう事ではなくて、遺言状に近いものです。
遺言状では財産分与のことがほとんどなわけですが、そうではなくて、自分が動けなくなってからどういう風にするかとか、死んだ時の連絡先リストとか葬式の出し方とか、その後の話も法律上の問題に関係なく全て好きなように書いておくというもののようで、一般的に存在するもののようです。



この主人公は生きているうちに出来る死ぬまでの段取りは、すべて自分で済ませておこうという、なんとも段取り命の人なのがおもしろいという観点で作られています。
だから、そんなに重たい内容ではなく、普通の人にとっては見た後に落ち込んでしまってダメージが大きいというような部分を狙ったものではありません。

僕も見ていて全体としては楽しかったです。「ああ、このおじさんやってるやってる(笑)」って感じでした。
自分の母親と妻とが仲が悪いのをどうにかしてから死にたいというのがあって、苦労しているけどうまくいかないとか、そんな場面など、苦笑しながらおもしろいです。
そういう所がいやらしくないんです。難病ものとか、そういう系って、同情をあおって押し付けて泣かせるみたいなものばかりじゃないですか。
押し付け中毒の映画は見たくないんですよ。この映画は全く違っていて、おもしろおかしく見せてくれます。

ただ、僕なりの観点から見た感想としては、人と人とがどれだけ理解し合える・・・いや分かり合えないのかという人間の限界を見せつけられてしまったという感じもあります。

ドキュメンタリーなので、ネタばれがどうのということが無いので書いてしまいますが、人と人とはたとえ夫婦であっても、親子であっても、結局、死ぬ瞬間に至っても分かり合えないで終わるのだなぁ、とかなり強烈に印象付けられてしまいました。
特に夫婦の意識の離れ具合ははっきりと見て取ることが出来ます。
また監督の演出の本意なのか否かわかりませんが、終わりのコメントについても、僕なりに感じた主人公本人の思いと、全く違った感じで終わらせています。
その終わり方のおかげで娘であった監督も結局他人の事は思いやれないんだなと、痛切に感じさせる結果となっています。
もしかしたら、その様に感じたのは僕だけかもしれませんが。

この映画、残念ながらTSUTAYAには置いていないんですよねぇ。見返そうと思って検索したのですがありませんでした。
映画館で再上映されるか、DVDを買うしか見る方法はありません。DVD買って手元においておきたくは無いですよねぇ。
こういう映画だからこそレンタルで見た後は返却してしまいたいのに。。。。

何かの機会に見かけたら、ぜひどうぞ。これは一見の価値があります。